レゴの本といえば
「いろんな人の作例が見れて楽し~♪」とか
「かっこいいレゴロボの写真が載ってるゼーット!」とかそんな感じの
夢いっぱいで
ビルド的にためになり、
読んでて幸せになれる
ものが多いですが・・・
この本にはそんなもの一切ない!
どこまでも限りなく現実。
というわけで今回は
レゴはなぜ世界で愛され続けているのか 最高のブランドを支えるイノベーション7つの真理
の感想をつらつらと書いてみますよ。
端的に一言で言っちゃうと経営学の、特にイノベーションという観点からレゴ社を読み解くビジネス書です。
ビルド的な情報を求めている人にはぶっちゃけ何の役にも立ちませんが、俺のようなレゴは企業として面白い、と思っているような人にとっては現時点における決定版、といっても良いほどの本ではないかと思いました。
熟練のビルダーさんであれば、ちょうど95~05年くらいの間にレゴの暗黒期があったことをご存知の方もいるかもしれませんね。
なぜレゴはそんな商品を出すようになってしまったのか、そしてその後倒産の危機を乗り越え、どうやって世界3位の玩具会社になったのかという事が「イノベーション7つの真理」のスキームをもとに語られています。
経営学に興味ある人なら読んで損はないと思いますよ、まじめな話。
しかしレゴ社に興味のある人ってどれくらいいるんだろうな。
ただこの本、ざっと10年以上(主に97~07。創業の事も書いてあるからそれも含めると半世紀以上)の事に言及してる割に
年表の類いがほぼないため疑問点とか持ち始めると戻るのが結構大変です。
なので簡単に年表にまとめてみますよ。
(西暦は概ねこの本に載ってるものを書いてます。wikiと違うのはそのせい)
必要そうなことをまとめた年表
1932年:レゴ誕生
1955年:今の形のレゴブロックの発売開始
1969年:デュプロ発売
1978年:初代レゴミニフィグ発売(この年を境に売り上げが右肩上がりで上昇し始める)
1979年:ケル・キアクCEO就任
テクニックシリーズ発売
1988年:レゴブロックの特許期限切れ
1993年:売り上げの伸びが鈍化する
1995年:レゴブロックのデジタル化を意図したダーウィン計画発動
1996年:ロンドンにレゴランド開園
1998年:売上高・投入された新製品の数ともに歴代最高を計上しながらも創業以来初の損失計上
2005年までに売り上げを2倍に延ばせば年収2倍という条件のもとポール・プローメン掌握。各種改革に着手。
フランチェスコ・チコレッラ掌握。レゴブランドの再構築のため各種改革を実行。
マインドストーム発売開始
1999年:スターウォーズ発売
スライザー発売
「レゴランド・カリフォルニア」開園
ダーウィン計画中止
2000年:デュプロの段階的な廃止、エクスプロアの市場投入
レゴムービー発売
2001年:バイオニクル発売
ハリー・ポッター発売
レゴエデュケーションセンター設立
ジャック・ストーン発売
ヨアン・ヴィー・クヌッドストープ入社
2002年:ガリドア発売
「レゴランド・ドイツ」開園
ジャック・ストーン打ち切り
2003年:ブラック・スミスショップアンオフィシャルで発売、後に公認化
ガリドア打ち切り
プローメン、チコレッラ経営陣から解任、ケル・キアクがCEOに戻る。
レゴ社、創業以来最大の赤字を計上、経営危機に陥る。
2004年:クヌッドストープ、経営の再建に取り掛かる。
エクスプロア廃止
デュプロ復活
クヌッドストープCEOに就任
2005年:レゴファクトリー(デザイン・バイミー)開始
シティの売り上げが前年の3倍を超える
黒字回復?
レゴ・ユニバース事業開始
マインドストームNXTがユーザーと共同の開発計画として始まる
レゴランド売却
レゴ・ゲーム開発開始?
2006年:マインドストームNXT発売
レゴ・アーキテクチャー開発計画開始
2007年:レゴ・アーキテクチャー試験発売
レゴ・ユニバースへの開発に一般ユーザーが参加
2008年:レゴ・アーキテクチャー一般発売開始
ニンジャゴー開発開始
クーソー開始
2009年:マインクラフト発売
レゴ・ゲーム発売
コンセプトラボのインナー・アースがパワー・マイナーズとして発売
2010年:レゴ・ユニバース発売
2011年:ニンジャゴー発売、記録的ヒットに
2012年:デザイン・バイミー打ち切り
レゴ・ユニバース打ち切り
途中から各論に入るので全体の流れがえらい分かりづらいですが、だいたいこんな感じだと思います。
予想以上に大変だった・・・
2001年と2005年あたりにいろいろやってますが、前者は赤字脱出のための取り組みで、後者はさらなる黒字のための取組というところに違いがありますかね。
・総論
年表と下の用語集書くので力尽きたのでさらっと。
というか年表見て興味がわいたなら、買ってみればいいんじゃないかな、と思いますけども。
(お買い上げはこちらで)
基本的にはレゴ社の衰退と復活というのを「イノベーション7つの真理」という考え方に当てはめて論じた本です。
文中でも何度か出てきますが、
・創造性と多様性に富んだ人材をそろえる
・ブルー・オーシャン市場に進出する
・顧客主導型になる
・破壊的イノベーションを試みる
・オープンイノベーションを推し進める
・全方位のイノベーションを探る
・イノベーション文化を築く
以上7つの考え方になります。
レゴ社に興味がある人はもちろん、この考え方に興味のある人もモデルケースとして有用だと思います。
あくまでもこの7つの視点から描かれている本なので、他の見方もあるよというのは留意したほうが良いかとも思いますが。
例えばレゴ社のやっていることはニッチ戦略で、コアコンピタンスを磨き上げることで経営危機を脱した。その後、チャレンジャーの立場に立つことになったが今後はどうなります事やら、という風にも書けますしね。
何気にレゴ社を企業として分析した本って日本だと中々手に入らないので、俺としては非常に読みごたえがありましたね。
ビジネス書とか読み慣れてる人ならすんなりいけると思いますし、レゴの商品名がめっちゃ頻繁に出てくるのでちょっと古いレゴが好きな人とかにも楽しめるんじゃないかと思いますね。
逆にレゴ知らない人で楽しめるのか、という不安は残る。
基本的に新しいプレイテーマの事が書かれてるんですが(何気にクリエイター・基本セットには一切触れられていない)、特にバイオニクルがフューチャーされてるので、バイオニクルがどのように作られて展開していったか、とか気になる人にはぜひ。
マインドストームに関する記述もなかなか読みごたえがありましたし、その後のユニバースの顛末と含めてオープンイノベーションのモデルケースとして結構有用かと思いました。
1章~5章までが総論で、その後が各論という感じになるので、2005年以降のことが非常にわかりづらい、という欠点がありますが、そこら辺は年表で補っていただけると。
というかオフィシャルでこれくらいつけてくれよ、と思うけどね!
あと各種数値がドルとデンマーククローネで書かれていること、前年の+〇〇%とか書いてある割に比較対象のデータが書いてなかったりするんで結局どれ位になったのかわかりづらいってのはありますが。
一部これ本当にあってるのか、というデータもありますし、そこら辺は気を付けた方がいいかもですが増えたんだよとわかればいいかな、という部分なんでまぁそんなに重要ではないと思います。
(例:バイオニクルは1.6億(2001)、シティは3.5億(2005)、スライザーは6億の売り上げ。因みにスライザー出た年の売り上げは10億位。スライザー小ヒットって書かれてるけど本当に?とか)
個人的にはニクルが世界初の組換えアクションフィギュアだという論旨は「?」と思いますけどね。
例えばアオシマの合体ロボシリーズってのが数十年前に出てるけどやってることそんな違わなくない、とかそもそもガンプラってまさにそれじゃないのとか。
日本においてですらブロック玩具がはやり始めたのって2005年くらいからなんで、かなり早い段階でそのコンセプトを打ち出していた、という事には同意しますけどね。直販事業を持っている玩具メーカーレゴだけって書いてあるけど、魂Webとかどうなのよ、とかマインクラフトが脅威になるとか言ってるけどその前に遊びのシステムこそレゴ社の強みみたいなこと書いてあるけどあれってプロダクト吐き出すものなんでそういう意味では競合しないんじゃないっすかね、むしろあれは造型全体にとっての脅威だろ、とかレゴの社のセット復刻みたいなこともやってたけど大人ユーザーに目を向けているという論旨の中で触れても良かったんじゃねぇの、とか細かい部分では色々と検討の余地があるかな、と思いますが大筋はあってると思うよ、多分。
まとめると「レゴのビジネスに興味のある人」にとってはマストバイな良著であると思います。
他に1つの企業のイノベーションの成否とかに興味のある人とか・・・まぁようは社会人、特に経営に興味のある人にはお勧めできる本ですかね。
逆にレゴが玩具として好きな人にはお勧めしづらいですねw
モロにお金の話ですからねぇ、これ。
表紙にミニフィグドン!と載ってますがそんな夢のある本じゃねーですし。
暫くこの手の本は出ないと思いますし、個人的に興味がある内容だったので非常に面白かったですね~。
マーケティングの観点から分析した本とかもあったら読んでみたいですが、あるかねぇ。
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久々にやった新製品レビューが本ってどうなのよw
・小難しい用語集
ついでに作った用語集。
レゴ興味あるけど経営学の用語なんて知らねーよ!という人向けに俺なりにまとめてみました。
詳しいことはググりましょう!
ブルー・オーシャン戦略・・・噛み砕いていうと競争相手が特にいないところでリーダーシップとって利益享受しましょう、的なお話。
上手くはまると金になるけど、そもそも需要がないから他のところがやってねぇ、という可能性もあるわけでそこら辺は注意。
「組換え可能なおもちゃなんて他のところはやってない!いける!!(需要があるとはいってない)」という感じ。
EVA・・・経済付加価値。経済的付加価値=税引後利益-(資本コスト×投資資本)という公式であらわされる。
「100万儲けたすげぇ!そういえば銀行から1億借りて金利が1%かかってるな!・・・あれ、1円も残ってない・・・」という感じ。
ABC・・・活動基準原価計算。製造間接費を把握する原価計算手法の事。
「インスト作るのに合計1,000万かかってるけど、これを一冊にまとめる費用はその内の500万だよね?で、全体で500時間かかってて、この車には200時間、このおうちには300時間かかってるからそれぞれのコストは200万と300万って事になるよ」とかそんな感じ。
原価・・・製造にかかった費用の事。どのように計算するのかというのは手法や状況によりさまざま。
余談だが財務会計と管理会計は異なるので、財務諸表上の数値と管理会計上の数値が異なるのは別に変なことではない。
FMC・・・全部原価計算。固定費も製造原価に含めた計算方法の事。
「このブロック作るのにプラスチックが100円、機械の費用が1個当たり200円かかってるな!よし、原価300円!!」という感じ。
欠点というか特徴として製品在庫にすべての費用が含まれてしまうため、在庫の調整で期間費用(1年間にかかった費用)を調整できてしまう。
期間費用との対応をより強めたのが直接原価計算だが、そこら辺説明すると長くなるので割愛。
MVC・・・ロイヤルカスタマーの意味だと思われる。
「ここに10万ある。ならば俺はそれを全額レゴに使うぜ!」とこんな感じの太い客の事。
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